越境ECを始めたものの、海外配送に関する情報が多すぎて判断に迷っていませんか。配送方法や業者による対応の違いは、利益率や顧客満足度に直結します。

本記事では、日本郵便・佐川急便・ヤマト運輸など主要な配送業者の特徴に加え、EMS・航空便・船便の違いを丁寧に解説します。コストを抑えながらも、安全かつ確実に商品を海外へ届けるための実践的なポイントを紹介し、配送戦略の見直しに役立てていただける内容をお届けします。

海外EC配送会社の配送料比較

海外EC配送会社の配送料比較

海外ECにおける配送業者の選定は、配送料や配送スピードに大きく影響します。各社の料金体系や対応地域は異なるため、比較検討せずに選ぶとコスト面でのロスにつながりかねません。ここでは、日本郵便・佐川急便・ヤマト運輸をはじめ、主要な海外配送会社の配送料を一覧で比較し、それぞれの特徴と活用のヒントを紹介します。

日本郵便

日本郵便
出典:https://www.post.japanpost.jp/bizpost/strength/overseas/index.html

越境ECにおける海外発送では、信頼性とコストのバランスが重要です。日本郵便は、全国から手軽に利用できる利便性と、幅広い配送エリアに対応した柔軟さで多くの事業者に選ばれています。ここでは、EMS・航空便・船便といった主要な配送手段について、それぞれの特徴や利用シーンに応じた選び方を紹介します。

EMS

地帯名 主な対象地域 10kgの配送料 配送スピード(目安) サイズ制限 重量制限
第1地帯 中国、韓国、台湾 9,400円 約2〜4日 長さ1.5m以内、長さ+周囲=3.0m以内 最大30kg
第2地帯 アジア諸国(香港、シンガポール等) 13,500円 約2〜5日 同上 同上
第3地帯 オセアニア、カナダ、メキシコ等 18,200円 約3〜6日 同上 同上
第4地帯 ヨーロッパ諸国 19,300円 約3〜6日 同上 同上
第5地帯 アメリカ本土、グアム、サイパン 22,300円 約3〜7日 同上 同上
第6地帯 中南米、アフリカ諸国 30,200円 約4〜10日 同上 同上

船便

地帯名 主な対象地域 10kgの配送料 配送スピード(目安) サイズ制限 重量制限
第1地帯 中国、韓国、台湾 5,550円 約1〜2か月 長さ1.5m以内、長さ+周囲=3.0m以内 最大30kg
第2地帯 香港、シンガポールなどのアジア諸国 6,250円 約1〜2か月 同上 同上
第3地帯 オセアニア、カナダ、メキシコなど 7,900円 約1.5〜2.5か月 同上 同上
第4地帯 ヨーロッパ諸国 8,850円 約2〜3か月 同上 同上
第5地帯 アメリカ本土、グアム、サイパン 9,450円 約2〜3か月 同上 同上
第6地帯 中南米、アフリカ諸国 11,500円 約2.5〜4か月 同上 同上

航空便

地帯名 主な対象地域 10kgの配送料 配送スピード(目安) サイズ制限 重量制限
第1地帯 中国、韓国、台湾 8,150円 約4〜8日 長さ1.5m以内、長さ+周囲=3.0m以内 最大30kg
第2地帯 香港、シンガポールなどのアジア諸国 11,050円 約5〜9日 同上 同上
第3地帯 オセアニア、カナダ、メキシコなど 16,550円 約6〜11日 同上 同上
第4地帯 ヨーロッパ諸国 17,800円 約6〜12日 同上 同上
第5地帯 アメリカ本土、グアム、サイパン 20,350円 約6〜13日 同上 同上
第6地帯 中南米、アフリカ諸国 27,400円 約8〜14日 同上 同上

参考:日本郵便

佐川急便(飛脚国際宅配便)

佐川急便(飛脚国際宅配便)
出典:https://www.sagawa-exp.co.jp/service/h-kokusai/
エリア 国例 10kgの配送料 配送スピード(目安) サイズ制限 重量制限
A 韓国 17,200円 2日 3辺合計260cm以内 50kg以内
B 台湾・香港 16,200円 2〜3日 同上 同上
C 中国・タイ等 17,900円 2〜4日 同上 同上
D ベトナム等 25,600円 2〜5日 同上 同上
E 米国・カナダ 25,200円 2〜4日 同上 同上
F 欧州諸国 30,800円 3日 同上 同上
G アフリカ等 53,800円 3〜9日 同上 同上
H 南米諸国等 53,800円 3〜9日 同上 同上

参考:佐川急便(飛脚国際宅配便)

ヤマト運輸(国際宅急便)

ヤマト運輸(国際宅急便)
出典:https://www.kuronekoyamato.co.jp/ytc/customer/send/services/oversea/
ゾーン 主な国・地域例 配送料目安(100サイズ・10kg以内) 配送スピード(目安) サイズ制限 重量制限
ゾーン1 韓国、台湾、香港、シンガポール、ベトナムなど 約4,600円〜 2〜4日 3辺合計100cm以内 10kg以内
ゾーン2 アメリカ、インド、オーストラリアなど 約6,800円〜 3〜5日 同上 同上
ゾーン3 イギリス、ドイツ、フランス、スペインなど 約8,500円〜 4〜6日 同上 同上
ゾーン4 南米、アフリカ、中東などその他の地域 約10,500円〜 6〜8日 同上 同上

参考:ヤマト運輸(国際宅急便)

DHL

DHL
出典:https://www.dhl.com/jp-ja/home.html
地域ゾーン 主な配送先 10kgの配送料 配送スピード(目安) サイズ制限 重量制限
Zone 1 韓国・台湾 ¥5,363 約1〜2営業日 120​cm​ × 80cm × 80m 70kg
Zone 2 中国・香港・マカオ ¥5,254 約2〜3営業日 同上 同上
Zone 3 東南アジア(シンガポール・タイ等) ¥6,389 約2〜4営業日 同上 同上
Zone 4 オセアニア・南アジア(豪州・インド等) ¥11,485 約3〜5営業日 同上 同上
Zone 5 北米(アメリカ・カナダ・メキシコ) ¥10,859 約3〜5営業日 同上 同上
Zone 6 欧州主要国(ドイツ・フランス等) ¥7,765 約3〜6営業日 同上 同上
Zone 7 東欧・ロシア等 ¥10,037 約4〜7営業日 同上 同上
Zone 8 中南米(ブラジル・チリ等) ¥13,513 約4〜8営業日 同上 同上
Zone 9 中東・アフリカ(UAE・南ア等) ¥12,857 約4〜8営業日 同上 同上

参考:DHL

UPS

UPS
出典:https://www.ups.com/jp/ja/home
ゾーン 代表地域 10kgの配送料 配送スピード(目安) サイズ制限 重量制限
Zone 2 韓国・台湾など 7,340円 最短1~3営業日・時間指定あり 最長辺274cm・胴回り合計400cm以内 70kg(UPS Box使用時)
Zone 4 中国本土・香港 8,470円 最短1~3営業日・時間指定あり 同上 同上
Zone 6 欧州主要国(ドイツ・フランス等) 9,620円 最短1~3営業日・時間指定あり 同上 同上
Zone 8 アメリカ・カナダ 11,170円 最短1~3営業日・時間指定あり 同上 同上
Zone 10 南米・アフリカ等 7,270円 最短1~3営業日・時間指定あり 同上 同上

参考:UPS

FedEx

FedEx
出典:https://www.fedex.com/ja-jp/home.html
ゾーン 代表地域 10kgの配送料 配送スピード(目安) サイズ制限 重量制限
A 中国、香港、台湾 39,540円 1~2営業日 274cm未満 68kg/1個口
B タイ、シンガポール、マレーシア 45,340円 1~2営業日 同上 同上
C インドネシア 48,140円 2~3営業日 同上 同上
D インド、オーストラリア、ニュージーランド 66,130円 2~3営業日 同上 同上
E 米国(西部) 66,330円 2~3営業日 同上 同上
F 米国(その他)、カナダ、メキシコ 66,630円 2~4営業日 同上 同上
G ブラジル、アルゼンチン、コロンビア 88,190円 3~4営業日 同上 同上
H ドイツ、イギリス、イタリア 87,520円 2~3営業日 同上 同上
I アラブ首長国連邦、ロシア、トルコ 101,290円 3~5営業日 同上 同上
J バングラデシュ 124,690円 3~5営業日 同上 同上

参考:FedEx

海外ECの配送料を安く抑えるための具体的な方法

海外ECの配送料を安く抑えるための具体的な方法

越境ECに取り組むうえで、配送料の最適化は利益確保の重要なカギです。ここでは、発送コストを抑えるために実践できる具体的な工夫を紹介します。梱包サイズや重量の見直し、配送業者の割引制度の活用など、すぐに取り入れられる方法を知ることで、無駄な出費を防ぎ、より効率的な物流戦略を構築しましょう。

梱包サイズと重量を見直す

越境ECにおける配送料の削減には、梱包サイズと重量の見直しが不可欠です。多くの配送業者では、実際の重さと容積重量のうち大きい方が料金の基準となるため、無駄な空間を減らすことが費用の抑制につながります。たとえば、商品に対して過剰に緩衝材を使用すると、体積が増えて余分な送料が発生しかねません。商品サイズに合った箱を選び、緩衝材も必要最低限にとどめる工夫が求められます。

また、複数の商品を一括で送る場合、重量が上限を超えると料金が割高になることもあるため、分割配送の方が結果的に安価になる場合も見受けられます。梱包方法の最適化はコスト面に加えて、破損リスクの軽減や配送スピードの向上にも貢献します。まずは現状の梱包を見直し、全体の配送戦略を洗練させていくことが重要です。

割引制度の活用

海外発送にかかるコストを抑えるには、各配送業者が用意している割引制度を上手に活用することが効果的です。たとえば日本郵便では、EMSや航空便を一定数以上まとめて送ると、10〜20%の割引が受けられる仕組みがあります。

さらに、ヤマト運輸では営業所への直接持ち込みによって、1個ごとの送料が安くなる制度が設けられています。こうした制度は、発送件数の多い越境ECにおいて送料の削減に貢献し、利益率の向上にもつながります。

また、FedExやUPSといった国際的な配送業者では、新規契約時に割引が適用されるキャンペーンが実施されていることもあります。割引の適用条件や対象は業者によって異なるため、あらかじめ内容を確認し、自社の配送スタイルに合った制度を積極的に取り入れることが、コスト管理の鍵となります。

海外ECの配送業者を選ぶ際のポイント

海外ECの配送業者を選ぶ際のポイント

海外ECでは、配送コストや日数だけでなく、補償制度や対応可能な荷物のサイズなども重要な判断材料です。最適な配送業者を選ぶことで、トラブルのリスクを減らし、顧客満足度の向上にもつながります。ここからは、業者選定時に確認すべき具体的なポイントを紹介します。

トラブルへの対応をしてくれるか

越境ECでは、配送中の破損や紛失、遅延といったトラブルが国内よりも発生しやすいため、万が一の際に迅速かつ的確な対応が可能な配送業者を選定することが重要です。あらかじめ、トラブル時の問い合わせ窓口の有無や対応速度、補償制度の内容を確認しておくと安心できます。

たとえば、日本郵便のEMSでは最大200万円の損害補償が用意されており、追跡機能も充実しています。さらに、DHLやFedExなどの国際便では、専用のサポート体制やトラブル発生時の再発送対応などが整っている点も評価されています。配送トラブルへの備えは、顧客満足度の維持や信頼の構築に直結します。越境ECを成功に導くためには、対応力に優れた業者を見極めて選ぶ姿勢が欠かせません。

補償の有無を確認する

越境ECにおける配送では、商品の破損や紛失といったトラブルが発生する可能性も考慮し、各配送業者が提供する補償制度の有無を事前に確認しておくことが重要です。たとえば、日本郵便が提供するEMSでは、最大200万円までの損害賠償制度が設けられており、安心して利用できます。

DHLやFedExなどの海外配送業者においても、補償付きのプランを選択でき、万一の際には迅速な対応が期待されます。なお、補償の範囲や上限額は業者やサービスによって異なるため、自社の商品価格や特性に応じて、最適なプランを選ぶことが求められます。

配送コストだけでなく、万が一の損害に備えた保険や補償制度の内容も踏まえ、各業者のサービスを比較検討することが肝要です。こうした視点から、よりリスクの少ない物流体制を築いていくことが重要となります。

配送可能なサイズや重量

海外ECにおける配送手段を選定する際には、各業者が対応可能なサイズや重量の上限を事前に把握しておくことが不可欠です。たとえば、日本郵便のEMSは長さ1.5メートル以内、かつ長さと周囲の合計が3.0メートル以内で、最大重量は30キログラムに設定されています。佐川急便では1梱包260センチ以内・50キログラム以内、ヤマト運輸では160センチ以内・25キログラムまでの対応と、それぞれ条件に差があります。

一方で、DHLやFedExといった国際配送業者は、70キログラムを超える大型貨物の取り扱いにも対応しており、大型商品を取り扱う事業者にとっては有力な選択肢となるでしょう。こうした条件を比較検討し、自社の商品特性に最適な配送ルートを見極めることが、円滑な物流体制の構築や顧客満足度の向上に直結します。

配送料金や配送日数

越境ECにおいては、配送コストと日数がビジネス戦略に直結する重要な要素となります。たとえば、日本郵便のEMSではアジア圏への10kg発送が9,400円〜13,500円で、配送日数は約2〜5日と比較的短期間です。一方、船便は同重量で5,550円〜11,500円と安価ですが、配送には1〜4か月を要します。

DHLやFedExであれば2〜3日での配達も可能な反面、料金は3万円〜5万円台に及びます。配送先や顧客ニーズ、商品の価格帯を踏まえ、最適な業者とサービスの選定が求められます。料金体系と所要日数を把握したうえで、自社に最も適した物流プランを導き出すことが成功の鍵となるでしょう。

海外ECにおける配送でよくあるトラブルとその対策

海外ECにおける配送でよくあるトラブルとその対策

海外ECでは、商品の安全な到着がビジネス成功の鍵を握ります。しかし現実には、通関での遅延や手数料の誤認、禁制品の誤発送など、配送時のトラブルが後を絶ちません。特に初めて越境ECに取り組む方にとって、これらの課題は利益損失やクレームの原因にもなり得ます。ここでは、具体的なトラブルの種類とその回避策について解説します。

通関や手数料トラブルの回避策

越境ECにおける配送では、通関手続きや手数料に関するトラブルが後を絶ちません。なかでも、インボイスの不備や記載ミス、関税負担に対する認識の違いから生じるクレームは、顧客満足度の低下につながる重大な要因です。

こうしたリスクを避けるには、各国の輸入規制や関税制度を事前に把握し、必要書類を正確に整えることが求められます。さらに、通関対応や書類作成を代行できる物流パートナーやフォワーダーを活用すれば、言語の壁や手続きの煩雑さも軽減され、配送全体の円滑化が期待できます。

あわせて、関税や手数料の負担者が購入者(DDU)か販売者(DDP)かを事前に明示しておくことで、取引後の誤解やトラブルも未然に防げます。安定したEC運営には、通関対応を含めた物流設計が欠かせません。

商品選定・禁制品の注意点

越境ECでは、取り扱う商品の選定に細心の注意が求められます。国によって輸出入の規制対象が異なり、違反した場合には税関での差し止めや罰則を受ける恐れがあります。たとえば、象牙やべっ甲などワシントン条約に該当する品、ライター・花火といった危険物、薬品類や刃物、電子タバコなどが禁制品となる場合があります。

さらに、アメリカではイラン製品、サウジアラビアではギャンブル関連商品のように、国別の独自規制にも注意が必要です。各国の規制内容や配送業者、ジェトロなどの情報をもとに、取扱商品の可否を事前に確認してください。また、航空便と船便で対応できる商品が異なる場合もあるため、配送方法に応じた選定も重要です。リスクを避けるには、十分なリサーチと慎重な体制構築が欠かせません。

まとめ:配送コストを抑えながらECビジネスを成長させよう

越境ECでは、配送コストの最適化が利益の向上と顧客満足度の維持に密接に関係します。本記事では、日本郵便・佐川急便・ヤマト運輸といった主要な配送業者の特徴を比較し、EMS、航空便、船便などの多様な配送手段の違いや活用方法を解説しました。

加えて、梱包サイズの見直しや割引制度の活用、トラブル時の補償制度、通関対策の重要性など、実践的なコスト削減の工夫も紹介しています。配送業者の選定と各サービスの内容を理解することで、無駄な支出を抑えつつ、安定した国際物流体制を構築することが可能です。今後は、商品特性や販売国に応じた配送戦略を明確にし、効率的な物流運営を通じてビジネスの成長と収益の最大化を目指しましょう。

越境ECの配送戦略を固めたら、次は「海外展開をどう進めるか」も視野に入れるべきです。戦略的な支援がほしいと感じたら、コンサルティング会社の活用も検討してみましょう。