越境ECは、国内外の消費者に商品やサービスをインターネットを通じて販売するビジネスモデルです。国内ECとは異なり、法律や規制、関税、為替リスクなどの複雑な課題が伴いますが、海外市場の巨大なチャンスを活かせる魅力があります。
そこで今回は、越境ECの基本的な知識から始め方、国内ECとの違い、注意点などをわかりやすく解説します。
【今さら聞けない基礎知識】越境ECとは？
越境ECとは、国内外の消費者にインターネットを通じて商品やサービスを販売するビジネスモデルです。国内のECとは異なり、販売国ごとの法律や規制、通関手続き、関税、為替リスクなど、特有の課題が発生します。
近年、越境EC市場は急速に成長しており、特にアジアや北米からの購買が増加しています。こうした流れから、越境ECは企業がグローバルにビジネスを拡大するための有力な手段として注目されています。
国内ECとの違い
国内ECと越境ECの大きな違いは、法規制や手続き、そして顧客対応の複雑さにあります。国内ECは国内市場を対象にしているため、法律や通関手続き、関税、言語、通貨の違いに対処する必要がありません。一方で、越境ECでは販売先の国ごとに異なる法律や税制に従わなければならず、関税や輸出入規制といったより高度な法的知識が求められます。
また、越境ECでは、海外配送や現地通貨に対応する決済システムの導入も必要です。これに伴い、配送コストや時間、関税などの追加費用も発生します。そのため、国内ECに比べて運営がより複雑になる傾向があります。
しかし、越境ECには巨大な市場にアクセスできるという大きなメリットもあります。特に日本製品の品質や独自性が評価されている国々では競争が少なく、新たなビジネスチャンスが広がるでしょう。
越境EC市場は拡大傾向にある
近年、越境EC市場は世界的に急成長を遂げています。2021年の市場規模は7,850億ドルでしたが、2030年には7兆9,380億ドルに達すると予測されており、年平均成長率は26.2%に上ります。特に、中国が世界市場の50.4%を占め、アメリカが続いて18.4%です。これらの地域では海外製品の需要が急増しており、日本製品など高品質な商品に対する関心も高まっています。
また、コロナ禍によるネットショッピングの急速な普及や物流の進化も、越境EC市場の拡大に拍車をかけました。消費者はスマートフォンやインターネットを使って手軽に海外から商品を購入できるようになり、その利便性が市場の成長をさらに後押ししているのです。
今後は、スマートフォン経由の購買や越境ECを利用したリピート購入が訪日外国人からも期待されているため、新たなビジネスチャンスが広がるでしょう。多くの企業は、海外市場での新たな販路開拓を積極的に進める時期に来ています。
参考：経済産業省「令和４年度 電子商取引に関する市場調査 報告書」
越境ECを始める前に知っておきたい注意点
越境ECを始める前には、いくつかの重要なポイントを押さえておく必要があります。特に、販売国ごとの法律や規制に違反しないように準備を進めることは不可欠です。さらに、通関や関税の手続き、為替リスク、そして顧客対応の整備など、国内ECにはない複雑さが伴います。これらの課題にしっかりと対策を講じることで、スムーズな運営と顧客からの信頼を築くことができ、越境ECでの成功につながるでしょう。
ここからは、越境ECを始める前に知っておきたい注意点を解説します。
販売国の法律や規制
越境ECを始める際は、販売国ごとの法律や規制を把握することが重要です。国によって、消費者保護法、製品の安全基準、環境規制、商標や著作権の取り扱いが異なり、違反すると罰則を受けるリスクがあります。
また、データ保護についても、EUのGDPRなど各国の規制に従う必要があります。これらの規制に対応するためには、事前に専門家の助言を受け、販売体制や法的要件を整えておくことが不可欠です。特に現地の法規制に違反した場合、損害賠償や訴訟のリスクが生じる可能性もあるため、慎重な準備が求められます。
通関や関税
越境ECを運営する際には、通関や関税への対応も不可欠です。まず、商品を輸出する際には、販売国での通関手続きをクリアする必要があります。特に、商品ごとに正しいHSコードを確認し、適切な関税率を把握することが大切です。HSコードは国際的に統一された商品分類コードで、正確に記載することで通関がスムーズに進みます。
また、商品には関税がかかる場合があり、関税率は商品カテゴリーや輸出先の国によって異なります。例えば、中国では郵便税や越境EC総合税、アメリカでは従価税や特別税が適用されます。このように国ごとに異なる関税制度に対応するためには、販売先の国ごとに事前調査を行うことが重要です。
さらに、顧客が関税を負担するケースも多いため、購入時に関税の負担が発生する可能性を明確に説明することが、顧客との信頼を築くうえで大切です。これを怠ると、受取拒否や返品などのトラブルにつながる恐れがあります。サイト上に関税に関する注意事項をあらかじめ記載し、顧客に十分周知しておくことで、トラブルを未然に防ぐことができるでしょう。
海外配送の選択肢と必要なコスト
海外配送に向けた運送業者の選定や配送方法の洗濯も、越境ECの運営に大きな影響を与えます。代表的な国際配送業者には、DHL、FedEx、EMSなどがあり、それぞれ料金体系、配送速度、追跡サービスに違いがあります。配送方法も、航空便、海上便、エコノミー配送など多岐にわたり、コストと納期のバランスを考えながら選ぶことが重要です。商品カテゴリーや重量に応じて適した方法が異なるため、各オプションを比較し、選択しましょう。
また、配送コストには関税や追加料金が発生する場合があるため、事前に正確なコストを把握し、顧客に明確に伝えることが信頼構築につながります。配送コストの正確な管理と、適切な物流体制の構築は、越境ECを成功させるための重要な要素です。
為替の変動のリスク
為替の変動も、越境ECにおけるリスク要因の一つです。例えば、円安になると日本からの輸出が有利になり、海外市場での価格競争力が高まりますが、逆に円高になると同じ商品が海外の顧客にとって割高となり、売上に悪影響を及ぼす可能性があります。また、為替の変動によって利益率が大きく変わることもあるため、安定した収益を確保するための対策が求められます。
このリスクを軽減するためには、為替ヘッジや現地通貨での価格設定が効果的です。さらに、動的価格設定（ダイナミックプライシング）を活用することで、為替レートの変動に柔軟に対応することもできます。定期的に為替レートをモニタリングし、適切な対応を取ることが、利益の安定化につながります。
問い合わせ対応や返品対応の整備
越境ECにおいて信頼性を高めるためには、「問い合わせ対応」と「返品対応」の整備も欠かせません。まず、多言語に対応したカスタマーサポートを整えることが重要です。異なる言語や時差にも対応できる体制を整え、自動翻訳ツールの活用や現地スタッフの採用を検討しましょう。
さらに、返品ポリシーは明確で簡潔に提示し、顧客が理解しやすく、手続きもスムーズに行えるようにすることが信頼構築に役立ちます。また、返品時の送料や条件を明示しておくことでトラブルを防ぎ、顧客満足度の向上にもつながるでしょう。
【6ステップ】越境ECの始め方
越境ECを成功させるためには、事前の準備が重要です。ここでは、越境ECを始めるための6つのステップを解説します。それぞれのステップを実践して、スムーズな運営と売上拡大を目指しましょう。
- ターゲット市場の選定
- 商品選定と現地ニーズへの適合
- 法律や規制の確認
- 決済システムの導入
- 海外配送と物流の選択
- サイトの多言語対応とカスタマーサポートの充実
それぞれのステップの詳細を解説します。
1.ターゲット市場の選定
まずは各国の市場規模や購買動向を調査し、自社の商品が需要を持つ市場を見極めることが必要です。例えば、アジア市場ではECの利用率が非常に高く、日本製品はその信頼性や品質の高さから高い評価を得ています。
一方で、北米市場は競争が激しく、成功のためには価格設定やブランディングが重要な要素となります。また、現地の文化や消費習慣にも配慮することで、より効果的な市場選定が可能となるでしょう。
2.商品選定と現地ニーズへの適合
次に、自社の商品が現地の消費者ニーズにどれだけ合っているかを事前にしっかりと調査しましょう。現地で人気のあるカテゴリーやトレンドを把握し、競合との差別化を図ることがポイントです。また、現地の文化や消費習慣に合わせて商品をアレンジすることで、より受け入れられやすくなります。
例えば、日本製品は高品質で信頼性が高いと評価されがちですが、その強みを引き出すためには、パッケージやデザインのローカライズが必要です。現地市場の文化や消費者の好みに配慮しつつ、日本製品ならではの魅力を効果的に伝えることが重要となります。現地の消費者に響くよう、戦略的な商品調整とマーケティングが求められます。
3.法律や規制の確認
次に、各販売国の法律や規制をしっかり確認しましょう。例えば、消費者保護法や製品の安全基準、商標・著作権に関するルールには特に注意が必要です。さらに、EUではGDPR（一般データ保護規則）のように厳しいデータ保護規制があり、事前に十分な対応が求められます。
また、税制や関税の制度は国ごとに異なります。それぞれの販売国に合った手続きを適切に行うことで、信頼性の高い事業運営が可能になります。これらの規制を無視してしまうと、罰則やトラブルに発展する恐れがあるため、事前の調査と適切な対応が欠かせません。
4.決済システムの導入
次に、販売する国ごとに適した決済方法を選びましょう。そうすることで、購入率の向上やカゴ落ちのリスクを軽減できます。例えば、中国ではAlipayやWeChat Payが主流ですが、アメリカやヨーロッパではクレジットカードやPayPalが一般的です。このように、ターゲットとする国ごとの人気決済手段を事前に調査し、導入することが成功につながります。
さらに、クレジットカード、デジタルウォレット、銀行振込など、多様な決済方法を提供することで、消費者が自国の通貨で安全に支払える環境を整えられます。PayPalやStripeなどの第三者支払いサービスを導入すれば、クレジットカード情報の共有を避けられ、セキュリティ面でも安心です。このような対策によって、信頼性が高まり、購入意欲をさらに引き出す効果が期待できるでしょう。
また、為替手数料や決済手数料を含めたコスト管理も重要です。外貨決済や多通貨対応が可能なプラットフォーム、例えばStripeやPayoneerを活用することで、手数料を抑えながら効率的に支払い処理が行えます。
このように、信頼性と利便性を兼ね備えた決済システムの導入は、越境ECの成功に欠かせない要素です。
5.海外配送と物流の選択
次に、適切な配送業者の選定と物流システムの整備を行います。代表的な国際配送業者には、DHL、FedEx、UPSなどがありますが、各社によってサービス範囲やコスト、配送速度が異なります。
例えば、DHLは迅速な配送が強みで、アジア圏内なら最短で翌日配達も可能です。ただし、コストが高くなる場合もあります。一方、UPSは大型荷物の配送に優れており、重量がある商品を送る際に適していますが、対応エリアに制限があることがデメリットです。配送業者を選ぶ際には、配送速度、コスト、対応可能な荷物のサイズや重量、補償内容をしっかりと比較することが重要です。
また、航空便や海上便などさまざまな配送方法があり、商品のカテゴリーや配送先によって適切な手段を選択する必要があります。航空便は迅速に商品を届けることができますが、大きな荷物ではコストが高くなることがあります。対照的に、海上便はコストを抑えられる一方で、到着までに1～3か月かかるため、リードタイムが長くなる傾向があります。そのため、複数の配送手段を確保し、状況に応じて柔軟に選択できる体制を整えることで、物流コストの削減や顧客満足度の向上につながるでしょう。
配送品質は顧客満足度に大きく影響します。そのため、配送状況をリアルタイムで確認できるシステムや、破損・紛失に対する補償制度を導入することでも、顧客の信頼を得られるでしょう。特に海外配送では紛失や破損のリスクが高いため、厳重な梱包が求められます。注意書きや緩衝材を使った安全対策をしっかり行い、商品が無事に届くよう努めましょう。
6.サイトの多言語対応とカスタマーサポートの充実
最後に、サイトの多言語対応とカスタマーサポートも充実させましょう。まず、多言語対応は、顧客が商品情報を正確に理解できるようになるだけでなく、新たな市場への参入や顧客層の幅を広げることにもつながります。
また、ブランドの信頼性を高め、国際的な認知度向上にも貢献します。ただし、単なる直訳ではなく、現地の文化や言語表現に合わせたローカライズが重要です。自動翻訳ツールを活用するか、プロの翻訳サービスを利用して、地域ごとのニュアンスを反映した正確な翻訳を提供しましょう。
次に、カスタマーサポートは顧客ロイヤリティの向上と信頼構築に不可欠です。異なるタイムゾーンや言語に対応できる体制を整えることが求められます。チャットボットやAIを利用した自動翻訳ツールを活用すれば、効率的なサポートを提供することが可能です。ただし、文化的なニュアンスへの配慮も忘れてはいけません。迅速かつ丁寧な対応を心がけることで、顧客満足度が向上し、長期的な信頼関係の構築が期待できます。
越境ECではプラットフォームの利用がおすすめ
越境ECを成功させるためには、適切なプラットフォームの選定が重要です。多言語対応や決済システム、物流の整備が必要になる越境ECでは、信頼性の高いプラットフォームを活用することで、スムーズな運営が実現します。以下では、越境ECにおすすめのプラットフォームを4つ紹介します。
- Shopify：多言語・多通貨対応で世界中の顧客に柔軟に販売可能
- WooCommerce：WordPressと連携し、カスタマイズ性が高い
- Magento：大規模なEC運営に適した柔軟なオープンソース
- AmazonやeBay：既存の国際顧客層にアクセスし、効率的に展開可能
おすすめプラットフォーム① Shopify
Shopifyは、越境ECに適したプラットフォームの一つです。50以上の言語と130を超える通貨に対応しており、多言語・多通貨対応が非常に充実しています。これにより、顧客のブラウザ設定に基づいて、言語や通貨を自動で切り替えられるため、世界中の顧客に対して柔軟な販売が可能です。結果として、越境EC運営において言語や通貨の壁が大幅に軽減され、ユーザーの離脱を防ぐ効果が期待できます。
さらに、Shopifyでは多彩なアプリやテーマが提供されており、ビジネスの成長に応じたカスタマイズが可能です。例えば、多言語対応アプリを使用することで、商品ページを自動翻訳し、現地の言語でスムーズなショッピング体験を提供できます。
また、配送業者との連携機能も充実しており、送料設定や税金の計算、インボイス作成を自動化できます。例えば、アメリカの州ごとに異なる税率を自動で計算し、顧客に正確な金額を表示することが可能です。さらに、SSL対応による高いセキュリティ機能も備えているため、安心してオンラインショップを運営できます。
参考：Shopify
おすすめプラットフォーム② WooCommerce
WooCommerceは、WordPress上で動作するオープンソースのECプラットフォームであり、高い柔軟性を誇ります。最大の魅力は、WordPressの豊富なプラグインと高いカスタマイズ性を活かして、多言語・多通貨に対応したショップを簡単に構築できる点です。例えば、WPMLなどの多言語対応プラグインを使用することで、商品ページやカート内容を複数の言語に翻訳でき、さらに各言語に合わせたSEOの最適化も可能です。また、地域ごとの異なる配送オプションや税設定も簡単に反映できるため、世界中の顧客に商品を提供できます。
決済面でも、StripeやPayPal、Klarna、銀行振込など、多様な決済ゲートウェイを簡単に導入でき、各国や地域のニーズに応じた支払い方法を提供可能です。WooCommerce自体は無料で提供されていますが、ホスティング費用やテーマ、プレミアムプラグインの利用などにより追加コストが発生することがあります。そのため、総コストは運営の規模やカスタマイズ内容によって変動します。
自由度の高さがWooCommerceの大きなメリットですが、WordPressに不慣れなユーザーにとっては学習が必要です。また、オープンソースの性質上、セキュリティ更新やSSL証明書の管理を自分で行う必要があるため、適切な管理体制の確立が重要となります。それでも、WooCommerceはグローバルな支払い方法や配送ニーズに対応できる強力なプラットフォームであり、越境ECを成功させるための選択肢となるでしょう。
参考：WooCommerce
おすすめプラットフォーム③ Magento
Magentoは、大規模な越境EC事業に適したプラットフォームです。オープンソースで提供されており、商品のデザイン変更や顧客ごとの価格設定など、柔軟にカスタマイズできる点が特徴です。さらに、60以上の言語や50種類以上の通貨に対応しており、各国の税制や配送オプションも細かく設定できるため、国際展開を目指す企業にとって魅力的な選択肢といえるでしょう。
また、大規模な在庫管理や複数チャネルでの販売にも対応しています。例えば、AmazonやeBayとの連携を可能にする拡張機能や、さまざまな支払いゲートウェイに対応したAPIを活用することで、ビジネスニーズに合わせた高度なカスタマイズが実現可能です。
さらに、Magentoには豊富なエクステンション（拡張機能）が揃っており、ブログ配信機能や「合わせて買う商品」の提案機能など、成長を支える機能を簡単に追加できます。
参考：Magento
おすすめプラットフォーム④ AmazonやeBayなどの現地ECモール
現地のECモールであるAmazonやeBayも、越境ECを始める際の有力なプラットフォームです。これらのモールはすでに多くの国際的な顧客を抱えており、マーケットプレイスを通じて短期間で海外展開を進めることができます。
特にAmazonでは、FBA（フルフィルメント by Amazon）という優れた物流サービスを利用することで、商品の保管から配送、そして顧客への対応までをAmazonが代行してくれます。また、さまざまな支払い方法にも対応しているため、出店者は効率よく販売活動を行うことができます。ただし、Amazonでの販売には出店料や販売手数料が発生し、またセールやキャンペーンなどAmazon独自のルールに従う必要があるため、コストと運営計画は重要です。
一方、eBayはオークション形式が利用できる点が特徴で、ユニークな商品やコレクターズアイテム、ヴィンテージ品などの販売に適しています。特定のニッチ市場に強みがあり、個人消費者をターゲットにする場合に効果的です。また、eBayはアカウント作成や出品にかかるコストが比較的低いため、始めやすいのも魅力といえます。ただし、販売者は顧客対応を英語で行う必要があり、問い合わせやクレーム対応に備えなければいけないでしょう。
これらのプラットフォームを活用すれば、短期間で効率的に海外市場へ進出することが可能です。どのプラットフォームを選ぶかは、取り扱う商品やターゲット市場に応じて判断し、コストや運営体制を事前にしっかり計画しておくことが成功の鍵となります。
越境ECを始める際に利用すべき決済手段
越境ECにおいては、ターゲット市場ごとに適した決済手段を導入することが重要です。ここでは、各国で利用される代表的な決済方法や、越境ECにおける決済手段のポイントを解説します。
越境ECで利用できる決済手段
越境ECで利用できる決済手段は多岐にわたり、主なものとしてクレジットカード、デジタルウォレット、銀行振込が挙げられます。
まず、クレジットカードはVisa、Mastercard、American Expressなどが世界中で広く利用されており、支払い処理が迅速で未回収リスクが低いのがメリットです。ただし、不正利用によるチャージバックのリスクがあるため、リスク管理が重要となります。
次に、PayPal、Stripe、Alipay、WeChat Payといったデジタルウォレットは、クレジットカードを使わずに簡単に決済ができるため、若い世代やモバイル決済が主流の市場で人気です。特に中国市場では、AlipayやWeChat Payが主要な決済手段として広く利用されており、ターゲット国に応じた対応が求められます。
さらに、銀行振込やネットバンキングも、一部の国では主流の決済手段です。例えば、ヨーロッパや中国では銀行振込が一般的に利用されています。越境ECを成功させるためには、各国の消費者ニーズや利用傾向に合わせて、適切な決済手段を導入することが重要です。
各国の主な決済方法
ターゲット市場ごとに異なる決済手段を理解することも、決済システムを検討するうえで重要となります。例えば、アメリカやヨーロッパでは、VisaやMastercard、PayPalといったクレジットカードやデジタルウォレットが主流です。一方、中国ではAlipayやWeChat Payといったモバイル決済が圧倒的なシェアを誇ります。東南アジアでは、現金決済や銀行振込が依然として根強く残る一方、フィリピンやマレーシアではGCashやGrabPayといった現地のモバイル決済サービスが急速に普及しているのが現状です。
ターゲット国の消費者が最も利用する決済方法を事前に調査し、それに対応することで、カート離脱率の低減やコンバージョン率の向上が期待できます。また、決済手段のセキュリティにも配慮し、安全な決済方法を導入することで、消費者の信頼を得られるでしょう。例えば、商品の未着リスクを避けるために、消費者が商品を受け取ってから決済が行われるサービスを導入するなどが有効です。
デジタルウォレットへの対応が今後ますます重要
越境ECにおいて、デジタルウォレットへの対応は今後さらに重要となっていくでしょう。特に中国では、AlipayやWeChat Payなどのモバイル決済が主流であり、東南アジアをはじめとするアジア太平洋地域全体でも、GrabPayやGCash、タイのPromptPay、シンガポールのPayNowなど、ローカル決済手段が急速に広まっています。これらの決済手段は、スマートフォンを使って簡単に支払いができるため、消費者に非常に人気です。
デジタルウォレットを導入することで、現地通貨での支払いが可能になり、価格が明確に表示されるため、購入時のハードルが下がり、カートからの離脱を防ぐ効果が期待されます。また、各地域の文化や消費習慣に合った支払い方法を提供することで、顧客満足度の向上やコンバージョン率の改善も期待できるでしょう。特にアジア太平洋地域では、2028年までにローカル決済手段がeコマース取引の69％を占めると予測されており、この流れに対応することが、越境ECの成功に欠かせません。
越境ECを成功に導くための3つのポイント
越境ECで成功を収めるには、以下の3つの重要なポイントに注意する必要があります。これらを実践することで、スムーズな運営と売上向上が期待できます。
- SNSも有効活用する
- データ分析を行い、定期的に改善する
- 代行サービスやコンサルの利用を検討する
それぞれ解説します。
SNSも有効活用する
越境ECを成功させるためには、SNSの活用が欠かせません。SNSは、商品の知名度を高め、ブランドへの信頼感を築くうえで非常に有効です。また、ターゲット層との関わりを深めるための効果的な手段としても活用できます。特に、Instagramのような写真や動画をメインに使用するプラットフォームでは、商品の魅力を視覚的に伝えられるため、海外の消費者に強い印象を与えることができます。
また、Instagramのストーリーズやリールを活用すれば、視覚的に魅力を伝えられるだけでなく、アンケートや質問機能を通じてユーザーと積極的にコミュニケーションを取ることが可能です。これにより、現地の消費者とのつながりが深まり、長期的にはブランドロイヤリティの向上にも貢献します。
また、ターゲット市場の言語でハッシュタグを設定することで、現地の消費者に投稿が見つけられやすくなります。さらに、現地のインフルエンサーを起用すれば、そのフォロワーとの信頼関係を活かしながら、商品の認知度と信頼性を同時に向上させることができます。
それだけでなく、Instagramの「Shop Now」機能を活用すれば、投稿から直接商品の購入につなげることができ、売上の増加やリピート購入の促進も期待できるでしょう。これにより、コストを抑えつつ、効率的に海外市場での成功を目指すことができます。
データ分析を行い、定期的に改善する
越境ECを成功させるには、定期的なデータ分析も重要です。顧客の購入傾向、アクセスデータ、カート放棄率、さらに地域や文化に応じた特性を分析することで、サイトの改善点や戦略の見直しが可能になります。
例えば、特定の商品が海外市場で売れている理由や、カート放棄の原因を理解し、その結果をもとに商品ページの改善や価格調整を行いましょう。PDCAサイクルを回しながら、データに基づいた改善を継続することで、売上の増加や顧客満足度の向上が期待できます。
代行サービスやコンサルの利用を検討する
越境ECを成功させるためには、物流、マーケティング、法規制対応などを代行サービスやコンサルティングに委託することが有効です。特に、各国で異なる税制や法律への対応には、専門知識を持つ代行業者やコンサルタントのサポートが欠かせません。
また、現地の市場ニーズに合わせたマーケティングや販売戦略を立てることで、成功の可能性を高めることができます。プロに依頼することで、リスクを最小限に抑えながらスムーズに運営できるでしょう。
ただし、代行業者に頼りすぎると、社内にノウハウが蓄積されにくいという課題があります。そのため、定期的に情報を共有してもらい、社内に知識を蓄積する仕組みを整えることが重要です。初めての越境ECでは、プロのサポートを受けることで、効率的に市場に参入でき、長期的な成功を目指せるでしょう。
まとめ：越境ECでビジネスを世界に広げよう
越境ECは、国内外にビジネスチャンスを広げるための有力な手段です。成功させるためには、各国の法律や規制、物流、決済システムに対応することが重要で、正しい準備を行えば、大きな成長が期待できるでしょう。特に、日本製品はその品質や信頼性から海外市場で高く評価されており、新たな市場開拓のチャンスといえます。
また、初めて越境ECに挑戦する方は、専門的な知識を持つコンサルティング会社に相談することも検討してみてはいかがでしょうか。以下の記事では、越境ECに強いコンサルティング会社をご紹介していますので、ぜひ参考にしてください。